(潮)映画「パンズラビリンス」のビート-3 - さかえのよ
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(潮)映画「パンズラビリンス」のビート-3

パンズラビリンス
03 /07 2019
※映画のネタバレしてます。
※この記事にあるジャンルやビートは、私が「save the cat」という脚本術の本を参考に分けたものです。断定的に書いてはいますが、練習ですので間違っている可能性が十分にあります。ご了承ください。
※ジャンルやビートの説明については、このブログでは特にいたしません。ご自身でご確認ください。
※ジャンル分け記事同様、ビート分け記事も個人的なメモ要素が高いので、意訳になっていたり、映画を見ていないと解らない表記もあると思います。そのへんはもろもろお許しを。
※◇がビートです


*****


◆第2幕

◇Bストーリー開始
(※オフェリアと大尉のストーリーがA、メルセデス関連のストーリーがBではないかと思います)
 @カルメンからもらったドレスに着替えたオフェリア
 @メルセデスは牛から乳を搾っている
 @以下の会話中、メルセデスが牛乳をボウルにすくいとるのが意味深にアップになる

オフェリア「妖精って信じる?」
メルセデス「いいえ。でも子供のころは色んなことを信じていたのよ」
オフェリア「私、ゆうべ妖精にあったの。守護神のパンにも会ったのよ」
メルセデス「パンに?」
オフェリア「背が高くて、すごく年を取ってて、大地のにおいがしたわ」
メルセデス「私のお母さんは『パンには気をつけろ』って言ってたのよ」


◇お楽しみ開始
 @大尉の作戦通り、集められた食料が駐屯地の食糧庫に運び込まれていく
 @メルセデスからひとつしかないという食糧庫のカギを預かる大尉
 @と、駐屯地から見える山の中腹で煙が上がっているのが見える
 @そこにゲリラがいるはずだと急いで向かう大尉たち



 @大尉たちがゲリラのもとへ向かって森の中を行く映像にかぶりながら、オフェリアが魔法の本を読み上げる声が流れる
 @その内容とは…
 ・まだ森が若かった頃、とても不思議な生き物たちが森にはたくさん住んでいた
 ・生き物たちは互いに助け合い、大きなイチジクの木の陰で眠っていた
 ・その木は製粉所のそばにある
 ・今その木は枝が枯れ、老いた幹はねじ曲がり、死にかかっている
 ・巨大なカエルが根元に住んで、木の成長を妨げているため
 ・カエルの口に魔法の石(パンからもらった)を投げこみ、腹の中から黄金のカギを取り出せば、その木は再び花を咲かせる



 @イチジクの木に着いたオフェリア
 @新品の靴は泥でぐちゃぐちゃ
 @ドレスだけは脱ぎ、木の幹に空いた穴の中へ泥まみれになりながら入っていくオフェリア



 @一方、煙の出ていた場所へ着いた大尉たち
 @そこにはもう誰もいなかったが、抗生剤が忘れられているのを見つける大尉
 @抗生剤が入っていたのは、医者がメルセデスに渡した紙包み
 @ゲリラたちは宝くじも忘れていった
 @まだその辺に隠れているだろうゲリラたちに叫ぶ大尉

大尉「(抗生剤と宝くじを)取りにきたらどうだ! 幸運がつかめるかもしれんぞ!」

※宝くじが何を示唆しているのか私は確信できませんでしたが、もしかするとこのセリフを言わせたかったからかもしれません。大尉のもとへ出ていって和解することは、双方にとって本当はハッピーにつながることなのかもしれません。

 @しかしゲリラが出てくるわけもなく、その場を去る大尉
 @帰っていく大尉たちを敵意で見つめるゲリラたち



 @その頃、木の穴の中で不気味な巨大カエルに出会うオフェリア

オフェリア「こんにちは、私はモアナ王女。怖くなんかないわ。恥ずかしくないの? 泥の中で虫なんか食べて。木が死にそうなのに太ってるなんて」

 @そんな言葉など聞かず、オフェリアの顔についた虫をベローンと舐めて食べるカエル
 @気味悪がるオフェリア、カエルの怒鳴り声にも怯える
 @しかし機転を利かせたオフェリアは、左手に虫と魔法の石を握りしめ、カエルに差し出す
 @その左手を舌でつかんだカエルは、虫と魔法の石を奪い取りそのまま食べる
 @魔法の石を食べたカエルは黄金のカギを吐き出し、オフェリアはその入手に成功



 @疲れ果てて木の穴から出てきたオフェリア
 @汚れないようにとせっかく脱いだドレスだったが、風に吹かれて泥の中に入ってしまっていた
 @すぐに雨が降ってきてずぶぬれになるオフェリア



 @同じ頃、製粉所ではそろそろ晩餐会が始まる様子
 @雨の中、晩餐会の客を出迎える大尉。またも懐中時計で時刻を確かめている
 @食堂では、オフェリアが帰ってこないことを心配しているカルメンとメルセデス
 @晩餐会が始まり、ゲリラに食料が渡らないようにするための配給手帳が客に配られる
 @抗生剤を見つけたことでゲリラの中に負傷者がいると気づいている大尉
 @この地での任務はつらいでしょうと言われた大尉は…

大尉「とんでもない。私は清められたスペインのこの地で息子を誕生させたい。人はみな平等だとやつらは信じていますが、それは間違った思想だ。人は平等ではない。我々が勝って内戦は終わった。もしやつらを皆殺しにしなければならないのなら、私は喜んで殺します。望んできたこの地に乾杯」

 @大尉は誕生日席に座り、背後には暖炉が燃えている


◇Bストーリー続き
 @闇の中、森に向かってランプをかざし、こっそり合図を送っているメルセデス
 @そこへ泥だらけのドレスを着たオフェリアが帰ってくる


◇お楽しみ続き
 @晩餐会、客の女性が大尉とカルメンの出会いを尋ねる
 @カルメンは大尉の手を握りながら、嬉しそうに答える
 @初めの出会いからしばらくたったのち、元の夫が死に、その後に大尉と再会したのだとカルメン
 @大尉はカルメンを拒否するように、握られていた手を退ける
 @女性客は、時がたってから「偶然」に再会するなんておもしろいわね、と言う
 @すると大尉、「失敬、妻はなれていないので、下らない話をお聞かせしました」と言う
 @しょんぼりするカルメンのもとに、オフェリアが帰ってきたことをメルセデスが告げる
 @晩餐会から出ていくカルメン



 @男性客の一人が「以前、大尉の父上にお会いしました」と言い出す

客「非常に印象的な方でした」
大尉「生粋の軍人だ」
客「お父上は戦死なさるその時、持っていた時計を壊して、ご子息に死の時刻を残されたとか。勇敢な死のお手本になるように」
大尉「父は時計など持ったことはない」



 @バスルームでは、オフェリアが汚したドレスに悲しみ小言をいうカルメン
 @お仕置きに今夜は食事抜きにされるオフェリア

カルメン「どうしてママの言うとおりにしてくれないの。あなたにはがっかりしたわ。お父様もそうよ、怒っていらしたわ」

 @それを聞いて笑顔を浮かべるオフェリア
 @カルメンがいなくなるとナナフシがやってきて、黄金のカギを手に入れたというオフェリアを再びパンのもとへと連れていく



 @パンの潜むあの深い穴の底には、石像が立っている
 @赤ちゃんを抱いた女の子と、その後ろに大きな角のある生き物が彫られた石像
 @石像に彫られた角のある生き物はパン自身で、女の子はオフェリアなのだと、肉をくちゃくちゃ食べながらパンが説明する
 @「赤ちゃんは?」というオフェリアの問いには答えないパン
 @黄金のカギはいずれ使う時が来るので大事にしろ、このチョークを持っていけとパン

オフェリア「あなたの言葉は信じられるの?」
パン「あなたに嘘などつくわけがない」

 @そうは言ってるがめちゃめちゃ不気味で怪しいパン
 @オフェリアも疑いながらその場を去る



 @翌日、駐屯地の食糧庫前に大勢の人が並び、配給を受けている
 @軍人が配給のパンを手に口上を述べている

軍人「我々スペインには火やパンのない家など、一つたりとも存在しない」



 @一人でまた魔法の本を開き、これからどうなるのかを問いかけるオフェリア
 @すると白紙のページに、子宮の形が真っ赤に浮かび上がる
 @隣の部屋ではカルメンがうめきはじめ、ページは見る見る真っ赤に染まっていく
 @見れば、苦しむカルメンは下半身から血を流していた



 @食糧庫の前では配給を待つ列のそばで、またも懐中時計で時刻を確認している大尉
 @そこへオフェリアが駆けてきて、大尉に助けを求める
 @二人のやりとりにかぶって、パンを手にした軍人が口上を続けている

軍人「このパンを受け取って帰るのだ、スペインが飢えに苦しむことはない。いいか、スペインには火やパンのない家など、一つたりとも存在することはない。これはフランコ政権がもたらすパンだぞ!」



*****



【ここまでで覚えておきたいこと】
・メルセデスがボウルに搾りたての牛乳をすくいとったこと
・晩餐会で大尉が誕生日席に座り、その後ろに暖炉があったこと


【カエルシーンの解釈】
※このシーンは、色んな方がそれぞれの解釈・考察をなさっているところです。
私は今回、冒頭ナレが大尉の声であり、右手の指輪もプロテスタントの証であるならば…という観点から解釈をしています。他の方の解釈を否定するものではありません。


・イチジクの木の話は大尉(純真を捨てた大人)の状況を説明しており、この物語の構図そのものである

@まだ森が若かった頃、とても不思議な生き物たちが森にはたくさん住んでいた
 まだ彼が若かった頃、彼にも妖精を信じる心(純真さ)があった

@生き物たちは互いに助け合い、大きなイチジクの木の陰で眠っていた
 しかし、妖精を信じるような純真さは彼の中に隠されていた(イチジクは花の咲かない木として有名であり、キリスト教ではアダムとイブが股間を隠した葉っぱであり、禁断の果実・知恵・欲望の象徴でもある)

@その木は製粉所のそばにある
 彼(大尉)は製粉所にいる
 
@今その木は枝が枯れ、老いた幹はねじ曲がり、死にかかっている
 大尉の心は枯れ、ねじ曲がり、死にかかっている

@巨大なカエルが根元に住んで、木の成長を妨げているため
 権威には従うべきという価値観が心に住みついて、本人をむしばんでいるから

@カエルの口に魔法の石を投げこみ、腹の中から黄金のカギを取り出せば、その木は再び花を咲かせる
 その価値観に3つの魔法(これからオフェリアが受ける3つの試練をクリアするための純真さ)を見せつければ、彼も純真さを取り戻すことができるだろう 


なぜ上記の解釈になったかというと、ひとつは、オフェリアがカエルに対して丁寧にあいさつをしたあと、左手を差し出したからです。カエルに左手をつかまれたあの不気味で怖い感じは、大尉に左手を差し出したシーンを思い起こさせました。
カエル、それは「言うことを聞きなさい」という大人の高圧的な価値観、不自由を強要する象徴なのでは、と思いました。

もうひとつは、このあと分かっていきますが、大尉が純真さを捨てようと苦しんでいる人間だからです



【軍人の口上がうるさいのは】
・パン=独裁者がもたらした者
これはスペイン映画なので、守護神パンは「ファウノ」と呼ばれています。ファウノをパンと呼ぶのは英語です。
そしてスペイン語でパン(食べるほう)はそのまま「パン」です。
これはかなりの推測ですが、
パン(食べるほう)=パン(守護神)=ファウノ
としての言葉遊び的な暗示があったのではないでしょうか。
つまり軍人が言っているのは、
「守護神パンは、独裁者(大尉側)がもたらした者であるぞ」
という意味なのではないかと。

ファウノが英語でパンと訳されることくらいは分かっていると思うので、あの軍人の口上のしつこさからするとただのモブセリフではなく、何かしら意味のあるセリフなのではと深読みしてみました。
しかしながら、多分食べるほうのパンは英語ではブレッドになると思うので、どちらもが「パン」となってこんな深読みができるのは日本語バージョンだからこそでしょう。


【大尉の人間像・父との関係について】
ここで大尉が懐中時計にこだわる意味が解りました。
時計は父の形見でした。
しかし大尉はそれを否定します。
私はその心境を、父に従っていることなど認めたくないからだと解釈しました。

この辺からだんだん分かってくるのは、軍人であった父から、子供のころの大尉がそれ相応のしつけをされてきただろうことです。
大人から「このようにしなさい」「私と同じように勇敢に死ね(純真さを失え)」と押し付けられ、従って生きてきた人、それが大尉です。
大人の言うことをきかないオフェリアとは、真逆の性格をしているということになります。
しかし大尉の心の中は複雑です。
大人の言うことに従ってはいるものの、心の奥底ではやはりオフェリアと同じものを持っているからです。
純真さをねじまげて、抑え込んで、そんなものは軍人たる自分には要らないのだと言い聞かせて生きてきた人なのです。

カルメンとの馴れ初めが語られたシーンにも、それが表れているように思います。
カルメンと「偶然に再会した」ように装ったのは、純粋にカルメンに恋をした大尉だったのではないかと。
嬉しそうに語るカルメンを、大尉は感情を抑えた軍人の顔で見つめています。
カルメンを出迎えた時の笑顔とは対照的です。
そして握られていた手をパッと払う。
あの場でカルメンが馴れ初めを語ることは、自身の純真さがばれてしまうようで、めちゃくちゃ恥ずかしく、腹立たしいことだったのではないでしょうか。
その話はやめてくれ……カルメン!
そう思うと、ちょっとかわいい大尉です。


【お腹の子は男と確信している理由】
大尉がこのような人間であるならば、お腹の子は「男」だと確信している理由も推測できてきます。
冒頭ナレが大尉の声なら、大尉は「王国に帰れるのは姫(女)」だということを知っている(少なくとも大尉本人はそう決めつけている)ことになるからです。
男である自分はいくら望んでも王国(純真)には帰れない、と思っているわけです。
父から「勇敢な死」を望まれた男児。
純真を捨て、子供心を押しつぶすような独裁的な価値観に身を染めて、死んでいくこと。それが勇敢な死だと。
大尉は自分の父がそうしたように、自分の子供にも同じことを教えようとしています。
自身の本心に反して、悪しき習慣を引き継いでいくつもりなのです。
ですから自分の子供は男だと確信しているのです。
こんな俺のもとに、女の子など生まれるわけがない、と。
なぜならこの価値観を悪しきものと知りながら引き継いでいくクズ人間なのだから、と。






ぐろわ姉妹

実の姉妹が小説を共同制作しています

ぐろわ姉妹
潮八(姉):発動する人
斑丸(妹):調整する人